気がつけば愛でした
「まぁ、静奈がそんなアイツを癒やしてやったらいいよ。」
貴子は声を小さくしてニヤリと笑った。
「何いってるんですか!止めて下さい!」
驚いて声を上げた静奈を、先輩の高杉秘書が振り返った。
と、その時、秘書課の扉がノックされる。
「あぁ、時間通りだね」
高杉秘書は呟いて扉を開けた。
「お待ちしていましたよ。お入り下さい。」
仕事口調で応対した高杉秘書が見つめた先には、高柳がいた。
「あ…」
今しがた、高柳の話をしていたため静奈は声を上げてしまった。
高柳はそんな静奈にチラッと目線を送る。
「社長がお待ちです。奥へどうぞ」
そう高杉秘書が案内しようとすると、先に社長が奥の社長室から出てきた。
「律。待っていたぞ。よく来てくれたな。」
「社長のご命令ですから」
口調は静かだが、言葉に嫌みを含んだ高柳に社長は嬉しそうに笑っている。
「さて、話は中でするか。静奈ちゃん、お茶お願い。」
「わかりました。」
高柳と目があったが、すぐに逸らされてしまった。