気がつけば愛でした


機嫌悪いのだろうか。

静奈はそう思った。目を逸らされたのは別にいいが、高柳の雰囲気が冷たく感じたのだ。


少し戸惑いつつも、お茶を持って社長室をノックする。



「失礼致します」



部屋に入るとソファーに向かい合わせで社長と高柳が座っていた。机には大量の資料。

高柳は静奈を見ずに、資料を真剣に見つめる。



「それ、どう思う?律」
「…こちらの会社はいいとしても、この会社は採算が合わなくなると思いますよ。」

「やっぱりか…。重役どもは昔からの繋がりを切るなって言うんだが?」
「繋がりはもったまま、契約金だけ次年度から下げればいいと思います。それも少しずつ。」



答える高柳に社長は満足そうな笑顔を見せる。



「わかった。そうしよう」



社長があっさり決断したことに少し驚く。


社長の高柳への信頼の置き方に驚いたが、当の高柳は表情を変えない。


静奈が部屋を出るころ、2人は今後のスケジュール調整を始めていた。






< 90 / 348 >

この作品をシェア

pagetop