気がつけば愛でした
機嫌悪いのだろうか。
静奈はそう思った。目を逸らされたのは別にいいが、高柳の雰囲気が冷たく感じたのだ。
少し戸惑いつつも、お茶を持って社長室をノックする。
「失礼致します」
部屋に入るとソファーに向かい合わせで社長と高柳が座っていた。机には大量の資料。
高柳は静奈を見ずに、資料を真剣に見つめる。
「それ、どう思う?律」
「…こちらの会社はいいとしても、この会社は採算が合わなくなると思いますよ。」
「やっぱりか…。重役どもは昔からの繋がりを切るなって言うんだが?」
「繋がりはもったまま、契約金だけ次年度から下げればいいと思います。それも少しずつ。」
答える高柳に社長は満足そうな笑顔を見せる。
「わかった。そうしよう」
社長があっさり決断したことに少し驚く。
社長の高柳への信頼の置き方に驚いたが、当の高柳は表情を変えない。
静奈が部屋を出るころ、2人は今後のスケジュール調整を始めていた。