気がつけば愛でした
「うわっ、つまんねぇの」
不満そうに口を尖らせている。
「っかさぁ、あいつ最近社長と仕事してんだってね。」
「え?」
突然、そう言われて静奈は箸が止まる。
上村は不思議そうに静奈を見返した。
「噂になってるよ。社長のお気に入りって。」
「お気に入りって…そんな…」
「まぁ、実際、俺なんかと違ってあいつはエースだから、社長と組んだり、大きい仕事を任されるのは当たり前だろうねぇ。」
嫌みを含んだ言い方に静奈はムッとする。
「でも高柳さんは自分の仕事は疎かにしてませんよ。」
「そこが可愛くねんだって。シレッと自分の仕事をこなしちゃう。あいつが慌てたとこ見たことねぇし。」
静奈はさらにムッとした。高柳はシレッと仕事をしている訳ではない。どんなに疲れていても、残業をしてでも自分の仕事は責任持ってこなしているのだ。
「努力の賜物ですね。」
「あ、静奈ちゃんもあいつの肩持つんだ?」
「別に肩持つわけじゃ…」
ドキッとして慌てて否定しようとしたが、当の上村は聞いてない。
「営業課のみんなからもスゲーって言われちゃって。むしろ出し抜くチャンスなのに、羨望の眼差しだぜ。他の奴のフォローまでしてさ。本当、可愛くない後輩。」