気がつけば愛でした
そう愚痴る上村に腹が立った静奈は黙って立ち上がった。
「あれ?もう行くの?」
「はい。私も高柳さんのように仕事が出来る人間になりたいので、もう戻ります。」
言外に、アナタのようになりたくないという意味合いを含めて、嫌みたっぷりに言いながら静奈は立ち去った。
まぁ、その嫌みに上村が気がついたかは別だが。
食堂を出て、まだ腹の虫が収まらない静奈はまだ来ないエレベーターのボタンに八つ当たりするように連打した。
「もう!何なのよあいつ!」
男の妬みほどみっともないものはない。
「あんなんで高柳さんに勝てるわけないじゃない!」
とエレベーターのボタンを睨みつける。
すると、
「俺が何?」
低い聞き慣れた声に後ろから囁かれた。
「きゃっ!?た、高柳さん!」
「俺が何だって?」
驚いて赤くなる静奈に、いつものように表情を変えずに聞いてくる。