身代わり王女に花嫁教育、始めます!
「承知いたしました」
六十代、いや七十代かもしれないモハンマドは手を顔の前で合わせ、丁寧にお辞儀をした。
王の顔を見てひざまずこうとしたが、カリムが側近と名乗ったため、何ごとか察してその程度にとどめたらしい。さすが年の功、機転の利く男だとカリムも感心する。
「我らは砂丘の向こうにて待機しております。いつでもお声をかけてくださいませ」
モハンマドはそう言い、エルハーム一族の十数人の男たちを引き連れて、砂丘を越えて行った。
「彼らは砂漠の護衛と思えばよい。あなたの言った“涸れ谷の魔物”が近寄らぬように見張っている」
「それは……恐ろしい悪魔なのでしょうか? ここにも来るのですか?」
リーンの声は明らかに怯えていた。
カリムは目を閉じ、わずかに砂を巻き上げる風に心を乗せる。風はカリムの問いに答え、彼はそれをリーンに告げた。
「この近くに魔物の気配はない。自然のオアシスなら、奴らも水脈の動きに引き寄せられることはないだろう」
六十代、いや七十代かもしれないモハンマドは手を顔の前で合わせ、丁寧にお辞儀をした。
王の顔を見てひざまずこうとしたが、カリムが側近と名乗ったため、何ごとか察してその程度にとどめたらしい。さすが年の功、機転の利く男だとカリムも感心する。
「我らは砂丘の向こうにて待機しております。いつでもお声をかけてくださいませ」
モハンマドはそう言い、エルハーム一族の十数人の男たちを引き連れて、砂丘を越えて行った。
「彼らは砂漠の護衛と思えばよい。あなたの言った“涸れ谷の魔物”が近寄らぬように見張っている」
「それは……恐ろしい悪魔なのでしょうか? ここにも来るのですか?」
リーンの声は明らかに怯えていた。
カリムは目を閉じ、わずかに砂を巻き上げる風に心を乗せる。風はカリムの問いに答え、彼はそれをリーンに告げた。
「この近くに魔物の気配はない。自然のオアシスなら、奴らも水脈の動きに引き寄せられることはないだろう」