身代わり王女に花嫁教育、始めます!
「心配はいらぬ。砂漠は王の妃を――バスィールの王女を快く迎えるだろう。だが、穢れた女が水源を汚せば……砂漠の精霊は黙っておらぬだろうな」


血色のよかった頬が一瞬で青ざめる。

そんなリーンを目の端に捉え、カリムは微苦笑を浮かべた。


水には裸で入りたいところだが、リーンの手前、それを諦めた。浴室の作法を教えたときとは事情が変わってきている。

あのときと同じ状況におかれたら、今のカリムならリーンを穢さずにいられないだろう。


カリムは上だけ脱ぎ、オアシスの泉に体を浸す。それはまさしく心の澱みを洗い流すかのような、清らかで心地よい水だ。

彼は水際で躊躇うリーンに向かって手を差し伸べた。


「さあ、こちらへ来なさい」

「で、でも……わたくしは……」

「泳げなくとも溺れる深さではない。それとも、あなたは精霊の怒りにふれるような、女性なのか?」

「そんなことは……そうではありません!」

「では、来るんだ」


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