銀棺の一角獣
「――なぜ――」


 アルティナは言葉を失う。ライオールがここまで来ている理由がわからなかった。


「……逃げられては困るからな」


 兜をかぶっているから、彼の表情はうかがうことができなかった。それでも、アルティナの背中には冷たいものが伝って、思わず傍らのキーランの腕にすがりつく。


「……逃げることなど――いたしません――!」


 正面からアルティナはライオールを見つめた。
 今までに何度もこうやって彼と対峙してきたけれど、怖いと思わなかったことなど一度もない。

 今だって、足が震えている。

 アルティナは、すがりついたキーランの腕を放した。そして、身体を支えるようがくがくしている脚に必死に命令して、まっすぐに立つ。


「わたしは逃げも隠れもいたしません」


 ライディーア王家最後の一人。勇気をもって、毅然と、ライオールに対峙しなくてはならない。


「……ライオール国王陛下」


 アルティナは喪服のスカートを摘むと、彼に一礼した。


「確かに一角獣についての伝承を、わたしは受け継ぐことができました――ですが」


 顔を上げたアルティナは、表情に恐怖が表れていないことを祈りながら話し始めた。
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