銀棺の一角獣
 彼の頭は重い。けれど、その重みが嬉しくて、アルティナは身じろぎせずにいた。

 少し離れた場所に立ったティレルは、ゆったりと尾を左右に振りながら周囲を見回している。

 結局ルドヴィクが目を覚ましたのは、日が完全に落ちてからだった。


「申し訳――」


 謝ろうとする彼を、アルティナは両手を振って押しとどめた。


「いいの。疲れていたのでしょう?」


 ティレルの指示で落ちている小枝を拾い集め、慣れない手つきではあったが火をおこすことに成功していた。

 その火を見つめて、ルドヴィクはため息をつく。


「アルティナ様に――そのようなことを」

「緊急事態だもの。しかたないわ――そうでしょう? わたしにだって、火をおこすくらいできるんだから」


 紫水晶の瞳に、燃えさかる炎がちらちらとうつる。アルティナはうつむいた。
< 189 / 381 >

この作品をシェア

pagetop