銀棺の一角獣
 城を出てからは髪を結い上げることはしないで、ルドヴィクのように一本に編んで毛先を結んでいる。

 今はそれを解いて背中に流していた。彼が眠っている間に川で水浴びをしたあと、まだ乾いていないその髪にルドヴィクはそっと触れる。


「……アルティナ様」


 ただ、名前を呼ぶその声音でわかってしまう。そこに込められた彼の想いに。

 その次に続くであろう言葉を――聞きたかったけれど、聞くことはできなくてアルティナは強引に立ち上がった。

 彼の手にすくわれていた髪が宙に舞う。


「……夕食の支度もできているの。見よう見まねだからうまくできたかわからないけれど」


 アルティナは保存用に堅く焼いたパンを火であぶり、干し肉を煮込んでスープを作っていた。見よう見まねと言いながら、それなりの味に仕上がっていてほっとする。

 食事の片づけを大急ぎですませ、アルティナはティレルにもたれかかって眠りについた。

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