銀棺の一角獣
「いいえ。ティレルに行ってもらいましょう――ルドヴィクに陣を突破させなくては」


 アルティナは表情を厳しくした。キーランの肩を頭から外し、立ち上がる。


「お願い――行って!」

「だめだ!」


 衰弱しきっているとは思えないほどの声音で叫ぶと、キーランはアルティナを押しとどめる。


「父上!」


 鋭い彼の声が、空気を裂く。けれど、それはライオールに届くはずもなかった。


「――父上!」


 再度呼ぶ声に、ライオールの肩が揺れる――のをアルティナは見たような気がした。


「何をしたの?」


 アルティナはティレルを振り返る。ティレルは肩を揺らした。


「キーランの声をライオールに届けてやっただけさ――たいしたことじゃない」


 向こうの陣でライオールが動き出すのが見えた。剣に手をかけ、こちらの城壁の上を見つめている。
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