銀棺の一角獣
 ティレルが黙り込んでいるのに気づいて、アルティナは彼の顔をのぞきこんだ。ティレルは、下を向いて尾を緩やかにふった。


「長くはもちそうもないな」


 小さな声で、ティレルが言った。ライオールが出て行った扉を、彼はじっと見つめている。


「長くはないって……?」


 アルティナは同じように小さな声で問い返した。


「ライオール、さ。あと半年もつかどうか――あいつに巣くったやつが彼に与えた影響は大きかったな」


 ティレルは深々とため息をつく。


「……そんな」


 アルティナは言葉を失った。彼はそこまで弱っているようには見えていなかった。多少疲れているような気配はあったけれど、まだ壮年と言っていい年代なのに。


「……それは……どうにも……あなたの力でも……、どうにもならないの?」
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