銀棺の一角獣
「そんな便利なことができているなら、戦になんてならないだろうさ。それ以前に、もっと早く――千年前の段階でどうにでもできていた。そうは思わないか?」


 ティレルの声音は苦い。


「――アルティナ様、よろしいでしょうか?」


 ルドヴィクが遠慮がちに声をかけた。


「キーラン殿下からの使いの者が、廊下に来ているのですが――通してもよろしいでしょうか」

「キーラン様が?」


 何か足りないものでもあっただろうか。彼の部屋は細心の注意を払って居心地よくするように命じておいたけれど、この慌しい状況だ。不備があってもおかしくはない。


「ええ、すぐに通してちょうだい。この部屋でかまわないわ。ティレル、あなたはどうする?」

「庭に戻る。何かあったら――と言っても、もう何もないだろうな。まあ何かあったら、呼んでくれ」


 ルドヴィクが使いを入れるために開いた扉から、ティレルは出て行った。
< 294 / 381 >

この作品をシェア

pagetop