銀棺の一角獣
「……それでも、わたしはあなたに忠実でありたいと……」


 反論する声がどうしようもなく弱々しくなる。


「そうだね。君がそうしようとしてくれていたのも知ってる。だけど、僕が言いたいのはそういうことじゃない」


 それに、と続けたキーランはアルティナの手を解放した。


「父も――それほど長くはないだろう?」


 知らなかったのはアルティナだけではないのだろうか。ティレルもキーランも……ひょっとしたらルドヴィクだって知っているのかもしれない。


「やっぱり、父の側にいようと思うんだ――あとどのくらい時間が残っているのかはわからないけれど。女王である君をずっとディレイニーに置いておくわけにも行かないし……ごめん。こちら側から押しつけた話なのに」
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