銀棺の一角獣
「……いえ、それはかまわないのですが。その点についてはもう少し……考えさせていただけませんか?」


 アルティナはキーランを見つめる。


「我が国には、ディレイニー王国の庇護が必要なのです。国力が衰えてしまった今はなおさらです。わたしたちの婚約はその証でもあるのですよ?」


 キーランがわからないという顔をしているので、アルティナは説明してやった。その言葉に、キーランは納得したようにうなずいた。


「そうだね。確かにそういった事情もあるね。大丈夫、きちんと父と話をするから――アルティナ……君の気持ちはわかってる。僕に忠実であろうとしてくれていることも。それもちゃんとわかっているから――」

「キーラン様……わたし、話が見えなくて」

「僕だって、この婚約にどんな意味があるのかくらいわかってる。君を不幸にするようなことはしないから――」


 もう行ってほしい、とキーランはアルティナに退出を促す。アルティナはキーランの額に指で触れると、一礼して退出した。
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