銀棺の一角獣
 キーランの意志を尊重すべきなのだろうけれど――それが彼の本心なのかわからない。

 側の部屋に控えている侍女が慌てた様子で扉を叩いた。アルティナのところへ駆け寄ると、使いが到着した旨を告げる。

 その使いは、山間の小さな村で農業を営んでいる小さな村の住民だという。字が読めないという彼は、アルティナのために封書を預かってきていた。

 封書の差出人は、途中の村で別れたミラールからだった。手傷は負ったものの、全員生き延びて近くの村に保護されているのだという。


「まあ、本当にありがとう――届けてくれたことに感謝します」


 アルティナは、手紙を届けてきた村人に丁寧に感謝の言葉を述べた。それから礼としていくばくかの金子を差し出す。

 受け取れないと彼は誇示したのだけれど――生活が苦しいことは十分わかる。
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