銀棺の一角獣
 旅の間に何度も同じような村を何度も訪れていたから、彼らの生活が苦しいことはアルティナ自身の目で見てきた。わずかな金子でもないよりはあった方がいい。


「……生き延びてくれた」


 それだけてアルティナの胸が温かくなる。無謀な旅についてきてくれた。もう二度と会えないと思っていたのに、生きてくれていた。

 先ほどの戦いで、騎士団はほとんど失われてしまった。騎士団を再構築する時に、彼らはきっと手助けになってくれる。それもまた――ほんの少しの希望であった。


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 数日の休養をとった後、ライオールは息子キーランと対面した。キーランは半年ほどの療養が必要であろうというのがティレルの見立てだった。

 キーランの婚約を破棄したいという申し出はライオールによって受け入れられ――ライディーア国とディレイニー国側の間に婚約を破棄したという条件を追記した上での条約が結ばれた。
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