銀棺の一角獣
□■□ ■□■ □■□


 ルドヴィクが出立した後、キーランはすぐにライディーアから立ち去った。


「アルティナに会えなくなるのが一番寂しいな」


 キーランはアルティナの手を握りしめた。指を絡め、手の甲を何度も優しく撫でる。それから名残惜しそうにその手を離した。


「一緒に来てって言えればよかったんだけどね」

「……キーラン様」


 アルティナの深い紫色の瞳をキーランはのぞき込んだ。そこに愁いの影はない――彼女が彼の前に初めて姿を見せたあの日、全身を包んでいた沈鬱な悲しみも。


「三人で――違う、ティレルも入れて四人で旅をするのは楽しかったね。大変だったけど」


 アルティナの瞳が潤む。


「また会いに来るよ、その時には――みんなでお茶を飲めればいい。国から一番上等の茶葉と、収穫した中で一番の果物を持ってくるよ。ティレルのために、ね」


 彼はアルティナを抱きしめ、それから頬に口づける。冗談交じりの口調で笑った。

「ルドヴィクに怒られるかな?」
< 311 / 381 >

この作品をシェア

pagetop