銀棺の一角獣
 婚約者との顔合わせの席からアルティナは早々に引き上げた。

 今日まで長旅を続けてきたのだ。身体も心も疲れ切っていて、早めに休みたかった。


「お帰りなさいませ。今、お着替えを用意しますね」


 待ちかまえていたケイシーは、細々と動き回ってアルティナの世話を焼いた。

 重い宝飾品を片づけ、きついドレスを脱がせて柔らかな部屋着に着替えさせてくれる。

 それから甘い香りのする薬草茶をいれて、アルティナの前に差し出した。

 遠くから、物音が響いてくる。


「――窓を壊すんですって。大変ですよね」


 カーテンをまくって外の様子を窺いながらケイシーは言った。
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