銀棺の一角獣
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 アルティナは、自分の父親が死亡した時に着たのと同じ喪服を着て葬儀に参加した。この喪服は、最初にこの国を訪れた時にも身につけていた。あの頃は、これから先に何が待ちかまえているのかわからなくてひたすらに不安だった。

 あれから信じられないくらいにいろいろな出来事があった。棺の中から復活した一角獣は、今もアルティナの側にいてくれる――それがいつまで続くのかはわからないけれど。
 千年の長きにわたって、魔をその身体に封じてきたディレイニー王国。最後に魔をその身に宿した王に心からの哀悼の意を捧げた。

 葬儀を終えた翌日、キーランはアルティナを自分の私室へと呼び出した。残念ながら、ティレルは大きすぎて彼の私室には入れない。ルドヴィクだけがアルティナについて、キーランの元へと赴いた。


「ティレルは、林檎が好きだろう?」


 本来なら起立していなければならない立場のルドヴィクも、キーランに勧められて着席している。三人の前には茶と茶菓子が並べられていた。それと綺麗に皮を剥いて食べられるようになった林檎も。


「この林檎は、他の品種より収穫の時期が早めなんだ。だから苗木をライディーアに持って帰ってもらえば、ティレルも林檎に不自由しないと思って。数年前に作られたばかりだから、まだライディーアには入っていないだろうし」


 国に帰る時に苗木を持たせてくれるというキーランの申し出を、アルティナは喜んで受け入れた。
 ティレルのことを、キーランが気にかけてくれるのがアルティナには嬉しい。いつか、彼も運命の相手と出会えますように――そう望まずにはいられない。


「ねえ、アルティナ」


 みずみずしい林檎をアルティナに差し出しながら、キーランは笑う。


「この林檎、今からティレルに届けてやろうか? 彼だけこの部屋に入れなくてむくれているかもしれないしね」


 彼がそんな表情をしていることは簡単に想像できた。山ほど運ばせた果物をやけ食いしていることも。


「ルドヴィク、ちょっとだけアルティナを借りるよ?」


 静かにルドヴィクが微笑んで、アルティナの椅子を引く。立ち上がったアルティナは、キーランの差し出した腕に自分の手を置いた。
 まだ、国は完全に復興したわけではない。やらなければいけないことは山積みだ。
 でも――それでも。こうして穏やかに過ごせる時間は幸せだと、アルティナは思った。
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