百鬼夜行の主

―翌日


授業の終了を告げる鐘が鳴り響く。瞬間、大勢の生徒達の歓声が響いた。


そう、今日は終業式があり明日からは夏休みなのだ。


私は五月蠅い歓声を無視し、窓の外を見る。青々と茂った草木には夏の花を咲かせているものもあり、その花が青の中で一際目立っていた。


「あ、あの!!」


窓の外から視界を声が聞こえた方へと移す。そこにはふわふわとした栗色の髪をした、女子生徒が立っていた。


「五十嵐さん、もしよかったら…今度一緒に出かけませんか?」


私は少し思考を巡らせ、ある結論にたどり着いた。


「ごめん、それは無理。夏休み中は行くところがあるから」


行くところとは百鬼達がいる廃ビルだ。そこで百鬼たちと夏を過ごす。それが私の夏の過ごし方だ。


女子生徒は残念そうな表情を浮かべる。


「そうでしたか…すみません。変なことを言って」


女子生徒は静かに自分の席に向かった。


私は再び窓の外へと視界を移した。

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