シャクジの森で〜青龍の涙〜
みんなに報告しなくっちゃ。

そう言って笑うメイに、アランにもう一度確認してからにするよう伝えながら、エミリーは昨夜のことを思い返していた。

そう。

あれからも、エミリーが眠ってしまうまでいろんな話をしたのだった――――



「―――エミリー。旅先というのに、一人にしてばかりですまぬな」

「いいの。だって、この国にはアラン様のお仕事で来ているんですもの」



こうして一緒にいて、ゆっくりお話するだけで、エミリーはとても幸せなのだ。

それを伝えると、堅かったアランの表情が柔らかになった。

相当気に掛けてくれていたようで、エミリーはますます幸せな気持ちになった。

やっぱりアランは優しいのだ。

胸に顔を埋めると、頭の上でリップ音が鳴った。



「危険な目にあったゆえ、早くに出立する予定であったが・・・次の国の入国期日はまだ先だ。早く向かっても良いのだが、先に迷惑をかけることもある――――間があるゆえ・・・どうだ?・・・どこかに出掛けるか?」



珍しくもちょっぴり躊躇しながらアランがそう言うので、エミリーは理解するのに少しの時間が要った。



「え、いいのですか!?・・いっしょに、お出掛け出来るのですか?」



思わぬ提案に声が大きくなる。

ぱっと顔を上げたエミリーを、優しさを湛えたブルーの瞳が見つめていた。



「君が、そのように喜ぶとは・・・やはり、そうした方がいいのだな?―――明日、この国での仕事が終わる予定だ。何か希望があれば申すが良い」

「え・・・っと、どのくらい時間があるのですか?」

「予想よりも早く仕事が進み、早く済んだゆえ、時間が出来たのだ。どこでも良いぞ、申してみよ。―――買い物か?」

「あ・・・それもいいですけれど、違うんです。・・・きれいな川と滝を見に行きたいです!」



前から思っていたことを伝えると、アランは微かに笑った。

何が、可笑しいのだろう。



「そういえば、君は以前からそう申しておったな。・・・分かった。明日は午後早くには終わる予定ゆえ、その後に参ろう。十分時間があるゆえ大丈夫だろう。知ってるところがある。大変美しい場所だ。そこで良いか?」


「はい、とても楽しみです」
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