シャクジの森で〜青龍の涙〜
その馬上の者が、す、と頭を下げたあとその場で降りて歩いてきた。
正体を暴くような鋭い瞳が、見下ろす。
その威光は、隊の最上位の者だと思えた。
「どうぞ起立して下さい。此方へ」
「っ、ですが団長!得体が知れません!」
「落ち着け。お連れしろとの命令だ。どうぞ」
唇を引き結び出した剣を持て余した様子なのを見てとり、団長は、剣を収めてお前も来いと声を掛けた。
フードの者は二人の間に挟まり馬車の前まで来ると、すぐに礼を取った。
扉の向こう、姿は見えなくとも感じる身震いするほどの気、王子にも劣らない相変わらずの威厳だ。
団長の手により扉が開かれると圧するほどの気が一気に溢れ出て来て、流石に一歩退いた。
「願いを聞き入れて下さり、感謝申し上げます」
「兵士が乱暴したね。皆、気が立っているんだ。許してくれるかい?――――オアシスの、ヘルマップ殿」
射るような光を宿す瞳が向けられる。
気が立っているのは兵士だけではないのだ。
見守っている周りの兵士たちから「オアシスの」「なんと館長殿とは」などといったざわめきが生まれる。
ヘルマップはフードを除けて人懐こい笑みを向け、いつもの口調で言った。
「やはり、お見通しでしたか~、流石です~!」
「隠していても分かるよ、君は印象深いからね。それはそうと・・・・いつもの魔よけ飾りは、どうしたんだい?」
笑みを含んだ柔らかな声が、後半は怪訝そうなものに変わる。
あぁアレですかと、ヘルマップは頭を掻きながら照れたように言った。
「国に滞在時は外すと決めております。言葉も。一種の意地、ですよ」
「そうか。意地も良いが無理は禁物だ。程々にしてくれ」
「はい。お言葉肝に銘じておきます」
「で、私に用とは―――あぁ、中に入ってくれ。移動しながら話そう。いいかい?」
「はい。勿論、願ってもいないことで御座います」
ヘルマップを収容し、隊は再び動き始める。
ほとんど休みなく走り続け難所の国境を超え、馬たちはかなり疲弊していた。
「あと少しだ!頑張ってくれ!着けばすぐに休ませてやる!」
馭者が鞭を振るって懸命に励まし、城へと続く急勾配の坂道を何とか上がりきる。
ゆるゆると城門を潜り、やがて隊は、本館前の広場に停まった。
玄関から大臣らしき紳士が二人飛び出て来て、黒い馬車の傍らに立ち「どちら様なのかと」訝しげな面持ちでいた。
降り立った人物を見た瞳が、大きく見開かれていく。
「ご苦労だったね。馬たちをゆっくり休ませてやってくれ」
優しく馭者を労い、優雅に歩くその人は。
「あ、貴方様は――」
「急な訪問、非礼は承知している。ギディオン王国パトリック・ラムスター、国王の代理で参った。王女に、お目通り願う」
正体を暴くような鋭い瞳が、見下ろす。
その威光は、隊の最上位の者だと思えた。
「どうぞ起立して下さい。此方へ」
「っ、ですが団長!得体が知れません!」
「落ち着け。お連れしろとの命令だ。どうぞ」
唇を引き結び出した剣を持て余した様子なのを見てとり、団長は、剣を収めてお前も来いと声を掛けた。
フードの者は二人の間に挟まり馬車の前まで来ると、すぐに礼を取った。
扉の向こう、姿は見えなくとも感じる身震いするほどの気、王子にも劣らない相変わらずの威厳だ。
団長の手により扉が開かれると圧するほどの気が一気に溢れ出て来て、流石に一歩退いた。
「願いを聞き入れて下さり、感謝申し上げます」
「兵士が乱暴したね。皆、気が立っているんだ。許してくれるかい?――――オアシスの、ヘルマップ殿」
射るような光を宿す瞳が向けられる。
気が立っているのは兵士だけではないのだ。
見守っている周りの兵士たちから「オアシスの」「なんと館長殿とは」などといったざわめきが生まれる。
ヘルマップはフードを除けて人懐こい笑みを向け、いつもの口調で言った。
「やはり、お見通しでしたか~、流石です~!」
「隠していても分かるよ、君は印象深いからね。それはそうと・・・・いつもの魔よけ飾りは、どうしたんだい?」
笑みを含んだ柔らかな声が、後半は怪訝そうなものに変わる。
あぁアレですかと、ヘルマップは頭を掻きながら照れたように言った。
「国に滞在時は外すと決めております。言葉も。一種の意地、ですよ」
「そうか。意地も良いが無理は禁物だ。程々にしてくれ」
「はい。お言葉肝に銘じておきます」
「で、私に用とは―――あぁ、中に入ってくれ。移動しながら話そう。いいかい?」
「はい。勿論、願ってもいないことで御座います」
ヘルマップを収容し、隊は再び動き始める。
ほとんど休みなく走り続け難所の国境を超え、馬たちはかなり疲弊していた。
「あと少しだ!頑張ってくれ!着けばすぐに休ませてやる!」
馭者が鞭を振るって懸命に励まし、城へと続く急勾配の坂道を何とか上がりきる。
ゆるゆると城門を潜り、やがて隊は、本館前の広場に停まった。
玄関から大臣らしき紳士が二人飛び出て来て、黒い馬車の傍らに立ち「どちら様なのかと」訝しげな面持ちでいた。
降り立った人物を見た瞳が、大きく見開かれていく。
「ご苦労だったね。馬たちをゆっくり休ませてやってくれ」
優しく馭者を労い、優雅に歩くその人は。
「あ、貴方様は――」
「急な訪問、非礼は承知している。ギディオン王国パトリック・ラムスター、国王の代理で参った。王女に、お目通り願う」