シャクジの森で〜青龍の涙〜
「えぇ、もちろんです。どうぞお入りください」



エミリーは手にしていたタペストリーを片付けて、急いで迎え入れた。



「異国とはいえ、君の部屋に入るのは初めてだね。少し、感慨深いものがあるよ」



そう言いながらパトリックは椅子に座った。

エミリーもテーブルを挟んで向かい合って座る。

密室でパトリックと二人きりになるのは薔薇園での一件以来で、ちょっぴり緊張してしまう。



「あの、パトリックさんは、どうしてここにきたのですか?アラン様に、呼ばれたのですか?」

「そう、だな・・・あぁいや。正確に言えば、ちょっと違うんだ。実は、君に、伝えなければならないことが出来てね。急ぎ駆け付けたんだ」



いつも優しいブルーの瞳に、ふと影が落ちる。

それは、なんだかとても哀しげで・・・。

もしかして、国で、何か大変なことが起きたのだろうか。

アランを飛ばして、エミリーに言わなければならないこととは、政治的なことではなさそうに思えるけれど・・・?



「えっと・・・わたしに?・・・なにか、あったのですか?」



何だか嫌な予感がして慎重に問いかけると、パトリックはテーブルの上に手を置き、ぐっと身を乗り出した。



「そうだ。いいかい?先ずは、気を、強く持ってくれないか」



その言葉を聞き、エミリーは一度深呼吸をして姿勢を正し、自分なりに準備万端整えると、まっすぐにパトリックを見つめた。



「はい。どうぞ、言ってください」



すると、パトリックは無言で頷き、テーブルの上にある組んだ自分の両手を、しばらくの間見ていた。

やがて、その手にぐぐっと力を込めると、意を決したように顔を上げ、まっすぐにエミリーを見た。

その表情が、とても辛そうに思える。



「あの、パトリックさん?どうしたのですか?」


「――――アランが、行方不明なんだ」


「ぇ・・・・?」



部屋の中に静寂が訪れ、風に揺れる窓がカタカタ鳴る音だけがした。

何も言えないまま、真摯な色を宿すブルーの瞳をただ見つめる。


エミリーは、自分の耳を疑っていた。

もしかしたら言葉の意味が違うのかもしれない。

確かめるのが怖い。

けれど―――
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