シャクジの森で〜青龍の涙〜
抵抗する力が弱まりどんどんか細くなっていく声。

肩は震え、立っているのがやっとのよう。

それは、あまりにも儚く――――



「――――っ、エミリー」



パトリックは、震える身体をそっと抱き締めた。と、か細い身体は再び抵抗を始める。

言葉にならない声を出し、小さな手は拳を作って懸命に胸を叩いている。

パトリックは包み込む腕を一層強くした。

気持は、同じだ。




「エミリー?いいかい、聞いてくれ。辛いのは、君だけじゃないんだ」




その言葉に、エミリーはハッと息をのんで動きを止めた。

そうなのだ。自分だけでは、ない・・・。




「・・・パトリックさん教えてください・・・わたしは・・・わたしだけ・・・しらなかったの?みんなは、しっているの?」



知っていて黙っていたの?

メイもナミも。あの笑顔は、あの励ましは、そんな意味があったの?


哀しげに問う声は、疎外感を訴えている。

パトリックは細い背中を、宥めるように優しくぽんぽんと叩いた。



「そうじゃない。これは一部の者しか知らないことだ。国にとっては、極秘事項にあたる。だが、これから徐々に広まってしまうだろう。私が来たのは状況把握や指示伝達の為だが、それだけじゃない。君を、迎えに来たんだよ」



パッと顔を上げた涙に濡れるアメジストの瞳が、パトリックを見つめる。



「だめ!だめよ、わたし、帰らないわ」

「それはダメだよ、エミリー」



諭すように言うパトリックの深いブルーの瞳が、アランのそれと重なって想いが加速する。



「嫌よっ、わがままを言ってるんじゃないわ。アラン様が見つかるまで居るの。それが妻の務めだわ。・・・・お願い、傍に、いたいの」



長い睫毛に支えられなかった雫が、はらはらと頬を伝い落ちる。

パトリックはそれをそっと拭い、ゆっくりと首を横に振った。



「アランが傍にいないこの国で、君を守るのは難しいんだ」

「でも、わたし・・・わたし」

「エミリー、聞き分けてくれ」



パトリックは包帯の巻かれた手をそっと握って、分かってくれ、と辛そうに言った。



「そんな・・・アラン様――――」



へなへなと崩折れる身体は優しい腕に支えられ、こぼれ出る嗚咽は、暫くの間、止むことがなかった。
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