シャクジの森で〜青龍の涙〜
「そんな、目的なんて・・・」

「そうよ!名前まで出して!姉さんみたいに歌えない私を笑いに来たのでしょう!?誰に言われて来たの?長?それとも王様?その誰か様に伝えればいいわ、ミアータは今日も駄目でしたって!」



涙を溢さんばかりに潤んだ瞳が、エミリーをキッと睨む。

それは怒っているわけではなくとても哀しそうで、エミリーも胸が苦しくなった。



「あ、ミアータさん。落ち着いてください。わたしは、誰にも頼まれてません。あの、ここは、神殿なのですか?それに、あなたは、リシェールさんの妹なのですか?」

「・・・えぇそうよ。というか、まさか、貴女、そんなことも知らないで来たの?」



ミアータは、エミリーを値踏みするように上から下までじろじろと眺めた。

山に入るとは思えないチャラチャラと飾り立てた出で立ちはどれも上質の物で、そこらの街娘ではなさそうだ。

お小遣いには困っていないと見える。

嘘は言ってなさそう。

でも、どうしてリシェールのことを知っているのだろう。



「はい・・・きれいな歌声に惹かれてきたんです。そしたら、ここに・・・」

「そうね、見れば見るほど貴女天然ぽいもの。迷子なら出口はあっちよ、早くお帰りなさいな。家の者に道を訊ねればいいわ。さよなら」



ミアータは、ぷいっと視線を逸らし、山の方を向いて俯いた。

小さな背中がとても寂しそうに見える。



「ありがとうございます。あ、あの、気になったのですけど。何が、ダメなのですか?とても綺麗な声なのに。良かったら、聞かせてください。だれにも言いませんから」



優しく語りかけるエミリーに対し、ミアータは憮然として言った。



「貴女何を言っているの?どこの誰ともわからない初対面の人に、話すわけないでしょう?話してどうとなるわけでもないのに」

「ごめんなさい。わたしは、エミリー・М・ランカスターといいます。国はギディオンです。話せば、気が楽になるかもしれませんし、もしかしたら、解決の糸口が見えてくるかもしれません。ね?」



優しく微笑むエミリーを見つめるミアータの表情が見る間に崩れ、ふふふ、と笑い声を上げた。

次第に我慢できないといった風情でお腹を抱えて笑いだした。

エミリーもつられて一緒に笑う。



「あはははは。もう可笑しいっ、別に名前を聞いたわけじゃないのに。それに、ギディオンだなんて。本当にそんな遠くから来たの?」
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