シャクジの森で〜青龍の涙〜
「――姉さん・・・本当?本当なの?私を、許してくれるの?酷いこといっぱい言ったわ。よく確かめないで、あんな薬を飲ませてしまったわ。なのに・・・」

「許すも何もありません。薬は、リシェールさんを治すためだったもの、仕方がないです」



そう、大好きな人を助けたい、その一心だったのだ。


誰にもミアータを責めることなんてできない。



「誰に何を言われても、どうか悩まずに、自信を持ってください。『今の巫女は、あなたなのです』」

「認めてくれるの?・・・ごめんなさい。ずっと、ずっと謝りたかったの。ずっと―――」



姉さん!と泣いて胸にすがって来たミアータを、エミリーは優しく抱きしめた。



ミアータはひとしきり泣いた後涙を拭い、す、と立ち上がり空を見上げた。

心のわだかまりが消え、キリっとした横顔がそこにある。



「私、もう一度歌うわ。神のためじゃない、姉さんに、捧げる。聴いて―――」

「はい」



さっきまでとは違った、凛とした歌声が響く。

軽やかで、それでいて力強く、とても心のこもったものだ。

が、それでも、空を覆う雲は晴れない。

でも、歌い続けていればそのうちきっと空が晴れる、そう思える力強さがあった。


ミアータのような巫女の努力が、今のヴァンルークスの空を作ったのだ。

なのに、神殿を追われて心ない言葉を浴びて。

どれだけ切ない思いをしたのか、計りしれない。

エミリーは哀しくて堪らなくなり、あふれる涙をこっそりと拭った。


そんなエミリーの身体を包み込むように、白い霧がサラサラと立ち込め始める。

視界が狭くなり、空を見上げて歌う姿と声がどんどん小さく遠くなっていく。


歌い終わって振り返ったミアータの驚いた顔が、満面の笑顔に変わって大きな声を出した。



「エミリーさん!ありがとう!私、頑張る!ぜったい―――・・・」



最後の方は聞こえなくなり、口をパクパク動かして懸命に手を振るミアータが霧の向こうに消え去り、静寂が訪れる。



「・・・ミアータさん、頑張ってください。わたしも、頑張ります」



これからも辛いことは沢山あるだろうけれど、ミアータなら乗り越えられる。そう確信できた。

「よかった・・・」

エミリーは、少しでも自分が役に立てたことを嬉しく思う。

でも。



「・・・これから、どうしようかしら」



再び先が見えなくなり、何を頼りにどちらへ進めばいいかわからず迷っていると、目の前の空間に霧が集まり始めた。

むくむくもくもくだんだんに白色濃くなっていくそれは、なめらかな曲線を持った女性の形を成した。
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