シャクジの森で〜青龍の涙〜
これは、持ち主からのメッセージなのかもしれない。



「――――アラン様は生きてるわ。そして、見つけてもらうのを待ってるのだわ。・・・でも、どこをどう探せばいいの?」



立ち上がったり座ったり。

居ても立ってもいられないけれど、具体的な行動を思いつけなく。


いらいらそわそわと落ち着きなくしていると、急に、周りの物が消え去った。

テーブルもソファもおまけに窓もない。



「え・・・?シャルル?」



瞬間的にシャルルを探して視線を彷徨わせれば、脚元でちょこんと座っていた。

一人じゃないことにホッとして視線を上げると、そこには、懐かしい人がおぼろげな姿で立っていた。




“―――・・・エミリー、久方ぶりですね・・・―――”



「シェラザードさま!」



ぼんやりとした輪郭がはっきりとすると共に、頭にじかに響くような声だったのが変わり、明確に耳に届き始める。



『・・・漸く、あなたとお話が出来ます。まずは、お礼を言います。ありがとう。シャルルも、よく頑張ってくれましたね』



シェラザードの光る手が、シャルルの頭をそっと撫でる。

そのほわほわとしたあたたかさに、シャルルは心地良さそうに目を閉じた。



「シャルルのことを知ってるのですか?それに、お礼というのは・・・・」

『この子は、私が、招いたのです。あなたの手助けとなるように』

「私の助けに・・・?」



素直な疑問を投げれば、シェラザードの微笑みに影が落ち、瞳が愁いを含む。



『えぇ。かの国、ヴァンルークスのことは、リンク王と共にずっと憂えていたのです。なんとかならないか、と。ですが、風の神に青龍、それに巫女の気が合わさって強力な膜となっていたので、私の力が弾かれてしまい及ばないのです。ずっと見守ってる中で、春が近づくにつれ、国から発せられる機運が強くなっていくことに気付きました。しかも、あなたが関わりそうなことにも。危険を感じて、急ぎ、月の雫と一緒にシャルルを呼び寄せたのです。常にあなたの傍で守れるように。猫は、霊力を持っていますから』



彼を呼び寄せるのは簡単でした。

常にあなたのことを想っていましたので。


そう言ってシェラザードはシャルルを見て柔らかく笑む。


エミリーは、自分がこの国に来た時のことを思い出していた。

シェラザードは、世界の狭間を超えるために自分に力を分けたと話してくれていた。

そうしたら、シャルルにも、天使の力があるのだろうか・・・。


シャルルを見れば、くりくりのまんまるな愛らしい瞳が見つめ返してくる。
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