ハッピークライシス









『"…厄介なことになった"』



フィリップ=フェデリコの誕生パーティの夜から一ヶ月程経った頃、ユエの携帯にシンシアから連絡が入った。てっきり先日のことで文句を言われるのかと思いきや、開口一番に彼から発せられた言葉はそんなことだった。


イタリア南部、アドリア海に面した港街バアリ。
城壁と港町に囲まれた旧市街は、細い道が入り組みまるで巨大な迷路のようだ。

ユエは現在、この地に小さなアパルトマンを一部屋借りて生活していた。
もともと特定の住居を持たず、"仕事"のたびに居場所を変えるのが常だ。今回、このバアリを選択したのも、『メテオラの乙女』が保管されるイァノ美術館を探るのにうってつけだった為である。

< 46 / 145 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop