Wild Rock
「すまない。救ってはやれなかった」
「いいえ…あの人は、私より早く天に召されただけ…私は、大丈夫です」
涙を拭い、精一杯の笑みを見せるアテナは、何かを乗り越えたように大きく見えた。
アテナは礼を言い、奥に戻って行った。
「食ったら北へ行くぞ」
『へ?』
三人は、もう行くのかよ。っという目でマリアを見ると、右腕を差し出してきた。
「南のマリアが殺られた。このブレスレットは、火のエレメントを持つ南のマリアが所持していた物だ」
「えっ?! お前南のマリアに会ったのかよ!」
マリアは首を横に振り、更に言葉を続けた。
「あたし達オルレアンの聖女が命を落とした時、そしてその後継者がいないときは、その力に相応しい者に転送されるようDNAに刻み込まれている。魔族達は、また躍起になってあたし達を襲ってくるだろう」
南の後継者ががまだ成長していない今、一時的に東のマリアに転送されてきたらしい。
くよくよしてはいられない。
強くならなければ、あのメイデンには勝てない。
マリアをあの時守れなかったという悔しさが、ルーシュの中で決意へと変わろうとしていた。