Wild Rock


 きょとんとしている少女に、今度はファブニルが声をかけた。

「ごめんなさいね。うちのヴァカが失礼なことしちゃって」

 バカだけを強調しながら言うと、ケンカしながら否定の言葉が飛んでくる。

 それを無視し、更に言葉を続けると、どうやらこの先の町の娘さんとのこと。
 魔族に町を襲われ、命からがら逃げ出して力尽きて倒れていたらしい。

「じゃあ近くの魔導師ショップに連れてって保護してもらいましょうか?」

「なら俺が連れていくぜ。かわいい君を、一人で行かせるなんてことはしないよ」

 てめぇが一番あぶねぇわ。っという視線が、ひしひしとフェンリルの背中を刺す。

 手を握られ、また悲鳴を上げてフェンリルを突き飛ばし、ルーシュに抱き着きながら助けを求めた。


 ぞくうっ!!


 可愛い子に抱き着かれれば、ドキドキして照れるはずなのに、なぜか背中に異様なまでの悪寒が走る。

 
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