Wild Rock
「見とれるわけねぇじゃん!」
否定しても、やっぱり周りの反応は変わらず、俺はふてくされながらグラスを拭いた。
ロッカーで着替えていると、いきなりアニエスが思い切りドアを開けて入ってきた。
ってか、俺上半身裸なんですけどっ?!
「フェンリル! 何か黒いのでたあっ!!」
「は?」
「だから、黒くって二本の触覚が生えてて、音も無く飛んでくる奴よ!」
かなり一生懸命に言ってくれてるけど、なんで一言で言えねぇんだか?
「ゴキブリだろ?」
「そんな直に言わないでよ!」
カサササ…
ドアから一匹のゴキブリが入ってくるのを、最悪にも二人一緒に見てしまった。
「あ~っ! ヤダ~ッ!」
アニエスは恐怖のあまり抱き着いてきた。
あ。胸けっこう、いやかなりあるな。
抱き着かれたまま、問題のモノが見えなくなるまで数十秒。
アニエスは我に返ったのか、そそくさと離れていこうとしたが、俺はそれを許さなかった。