Wild Rock

 そんなマリアの肩を、ポンッと叩きながらファブニルが言った。

「仕方ないわよ、育ち盛りなんだから。どこか座れる場所を…」

「キャーッ! 誰か助けてーっ!」

 女性の悲鳴が耳に入る。
 一瞬辺りの空気が止まったが、また賑やかな音楽や声が支配する。

「悲鳴が聞こえたのに、何で皆フツーなんだ?」

 ルーシュの持っている食べ物の山からイカ焼きを取り上げ、ほお張りながらフェンリルがポソリと言うと、すぐ横でパスタを茹でているおばさんが声をかけてきた。

「あんた達旅の人だろ? あれはこの街の領主の息子がやらかしてんのさ」

 半分怒ったように言うおばさんに、四人は顔を合わせた。

「なら注意すれば…」

「そんなことできやしないさ! すればこっちが追い出されちまうさ! それが怖くて、皆誰も、何も言わないのさ」

 
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