Wild Rock

 あれからどれくらい経っただろうか?

 アタシ自身の体も冷えてきた。
 涙と心が、そろそろ別れを告げよと、そう言っているかのように、生きることを選ぶ自分の体。

 壁を擦るように足を立たせ、姉さんの側まで、震える足で歩いて行く。

 禁断の蒼いバラが似合う、その血の気の引いた白い肌。
 また涙が出そうになるのを我慢した。

 泣いて見送るのは、返って死者の行く道を閉ざしてしまうから。


 かけられていたシーツを剥ぎ取り、あらわになる綺麗な体。

 サヨナラだけは、最期に言わせて欲しくて、キスをした。

 唇に…頬に…手に…胸に…腹部…足に…そして最後にもう一度唇へ。

 キズも、打たれた痣もなく、綺麗な姿のまま、あなたは逝ってしまうのね…。



 ?



 何かおかしい。

 違和感が神経を廻っていくのがわかる。

 姉さんの胸にこんな羽のタトゥなんかなかった。



 羽…ホントに、トリの羽…?



 アタシはハッと思い出し、自分の部屋へと駆け出した。

 嫌な予感。
 絶対その場に、あってはならない禁断の果実。

 自分だけしか知らない隠し部屋の仕掛けを解除して、階段を駆け降りた。
 興味本位で集めた、分厚い本。

 そのうちの一冊を取り出し、乱暴に机の上に置く。
 記憶を辿りながらページをめくり、探し当ててアタシは驚愕した。


 
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