Wild Rock
ペンライトをくわえ、壁と床の隙間に書いてある落書きのような文字をみつけた。
砂埃をかぶっていたからそれを払いのけ、ピアスをはずしてルーペで覗き込む。
何かあったときのために、アクセサリー系は全て探検者用に改造していたのがよかった。
「あった! これだ」
魔族に関係する者がいない限り、気づかれず、恐らくはみつけられないであろう言葉が、そこには刻まれていた。
<契約印を持つ者よ 我が名と刻印を示せ>
契約印。
姉さんの胸に刻まれていたあの羽の痣。
ピルケースの中から布のような物をを取り出す。
姉さんの皮膚だ。
何かの役に立つと思い、そこだけを切り取ったのだ。
痛い思いさせてごめんよ。
「右手に闇 左手に静寂
我が前方に悪 後方には死を
契約印と偉大なるサタナキアの名のもとに 禁断の扉よ開け放て」
声を少し震わせながら呪文を唱える。
悪魔などを召喚するときは、声を低くし、震わせるように唱えるのが約束事なのだ。
一瞬の間を置き、音もなく一枚の壁が持ち上がっていく。