Wild Rock


 ペンライトをくわえ、壁と床の隙間に書いてある落書きのような文字をみつけた。
 砂埃をかぶっていたからそれを払いのけ、ピアスをはずしてルーペで覗き込む。

 何かあったときのために、アクセサリー系は全て探検者用に改造していたのがよかった。

「あった! これだ」

 魔族に関係する者がいない限り、気づかれず、恐らくはみつけられないであろう言葉が、そこには刻まれていた。

<契約印を持つ者よ 我が名と刻印を示せ>

 契約印。
 姉さんの胸に刻まれていたあの羽の痣。

 ピルケースの中から布のような物をを取り出す。
 姉さんの皮膚だ。
 何かの役に立つと思い、そこだけを切り取ったのだ。

 痛い思いさせてごめんよ。


「右手に闇 左手に静寂
 我が前方に悪 後方には死を
 契約印と偉大なるサタナキアの名のもとに 禁断の扉よ開け放て」

 声を少し震わせながら呪文を唱える。
 悪魔などを召喚するときは、声を低くし、震わせるように唱えるのが約束事なのだ。

 一瞬の間を置き、音もなく一枚の壁が持ち上がっていく。

 
< 71 / 251 >

この作品をシェア

pagetop