幕末オオカミ
有無を言わせぬ圧力で、あたしは二階へ押し戻された。
一階や裏口ではまだ、刀どうしがぶつかりあう音がしている。
しかし……。
二階からは、物音がしなかった。
「総司……?」
もう、敵はいないんだろうか。
おそるおそる踏み出すが、何もあたしを襲うものはなかった。
「……っ……」
浪士たちが逃げた手すりの上から、月が丸見えになっている。
その月光に照らされて見えたのは、浪士の遺体と、血だまり……
踏み出すたびに、足元でびちゃりびちゃりと、嫌な水音がした。
たまにぐにゃりとしたかと思うと、肉塊が足の裏にこびりついていた。
むせ返るような血の匂いに、心臓が煽られる。
不規則に、不安の音を刻む。
どうして……?
どうして、誰も動かないの……?
ただ一人立っているはずの、総司は、どこ……?