幕末オオカミ
──幻覚なのだと思った。
総司の牙は、浪士の着物と皮膚を噛みちぎり、その腹を破る。
血が飛んでくるのにもかまわず、総司はそこへ再び顔を近づけ……。
内臓をくわえ、首の動きだけで、それを外へ引きずり出した。
「やめて……っ!」
今にもそれを食べてしまいそうな総司に、声をぶつける。
もう、見たくなかった。
血も、臓腑も、そんなものはどうでもいい。
ただ、獣に還っていく総司の姿は、もう見ていられなかった。
「おあずけっ!!」
ありったけの霊力を込め、お札を総司に投げつける。
それは彼の右肩に当たり……ぽん、とマヌケな音を立てて破裂した。
またも、あたしの霊力じゃ歯が立たなかったんだ。
「……ぐ、……ぅう……」
総司はくわえていた内臓を離し、こちらをにらんで喉を鳴らす。
正気には戻せなかったが、総司は初めてあたしの姿をその金色の瞳に写した。