フクロウの声
返り血だらけになった山崎がやっと一人倒してマオリと沖田に言った。

「いやあ、えらいめにおうた。
 俺は報告に向かいますよって、
 沖田さんははよここから離れてください。」

「そうですね。あとは頼みます。」
 
山崎は足早に去っていった。

それを見送っていた沖田がゆっくり振り返る。

「そのフクロウは何?」
 
マオリは息が一瞬止まった。
体を強張らせる。
 
おれも驚いた。

人間は死ぬ間際、一瞬おれの姿を見ることはあるが、
これまで宿り主のマオリ以外の人間に見えることはなかった。

「肩にとまっているね。
 珍しいなあ、京でフクロウが見られるなんて。
 しかも全身が真っ白だ。美しいなあ。」
 
沖田が一歩、一歩近づいてくる。
それに一瞬遅れてマオリが後ずさりする。
 
おれは大きく揺れるマオリの肩に強く爪を立てて留まった。
バランスを崩して体が傾く。

おれは羽を大きく広げてばさばさと羽ばたいて体勢を立て直した。

「おお。」
 
沖田は嬉しそうにおれがはばたくのを見て笑った。
見えているのは確実で、しかも継続的に見えているようだ。

なんなんだ、この男は。
 
げほげほと、沖田は急に咳き込んだ。

喉の奥深くに蜘蛛の巣がからんだような嫌な咳だった。
 
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