フクロウの声
「やあ、白いフクロウ。」
 
無邪気な笑いを含んだ声にマオリは振り向いた。

「また会った。」
 
そこにいたのは沖田であった。縁側に座ってマオリを見上げている。
今夜はかすかに頬に赤みが差している。

「どうしてここに?」
 
マオリは驚いてあたりを見回した。後ろで結った髪が揺れた。

「そこの座敷で宴会を開いてるんだよ。」
 
沖田は廊下の柱に背を預けて、
あごでにぎやかな笑い声の聞こえる座敷を指した。

「土方さんもいる。会ってくれば?」
 
沖田はマオリを見透かしたように含んだ笑みを浮かべた。
 
マオリはムキになったように首を横に振る。
 
かすかに土方の声が混じって聞こえる。
マオリは無意識にその声を探した。

「今日はフクロウは眠そうだね。」
 
沖田は庭に続く廊下の縁に腰をおろした。

「なぜ見えるんですか?」
 
マオリは思い切って聞いてみた。
おれは温かいマオリの髪の中にもぐりこんだ。

「さてね。しかしフクロウは死を呼ぶと昔から言うじゃないか。
 だからじゃないかな。」
 
マオリは首をかしげた。

沖田は懐から竹とんぼを出してもてあそんでいる。

< 90 / 206 >

この作品をシェア

pagetop