フクロウの声
「私は君が土方さんに拾われて、
 人を斬るようになるずっと前から人を斬ってきたんだよ。」
 
沖田の手から放たれた竹とんぼがびゅっと飛んで夜の闇に飛んだ。
竹とんぼの消えた先の闇を沖田は見つめている。

「おら・・・私は死神に命を救われた。」

マオリも竹とんぼの消えた闇に向かって小さくつぶやいた。

「代わりに体を差し出した。私が刀を振るえるのはフクロウの力。」
 
土方にも山崎にも話したことのないことを、
マオリは沖田に話した。

むやみに話すことではないと思っていたが、
不思議とこの男にはそれを押し留まる気持ちが沸いてこない。

沖田とマオリは黙って闇を見つめ続けた。

「なるほど。」
 
沖田が頬杖をついた。

「それは私と同じだ。」
 
マオリは沖田の横顔に視線を移した。
 
沖田はマオリの後ろから聞こえる、
仲間たちが歌いだしたでたらめな調子の歌に、
いとおしそうに耳を傾けた。

「私も新撰組に、何もかもを差し出した。」

沖田は熱っぽく灯りの漏れる障子を見ている。

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