恋猫

 「大友さま、これは血の跡じゃねえですか」

 銀次が、右足の鼻緒に付いている黒ずんだ染みに目を留めた。

 「見せてみろぃ」

 尚八郎が鈴の右足の下駄を手に取った。


 「違えねえ。これは、血の跡だぜ」


 長年、同心のお勤めをしている関係上、尚八郎は殺害現場で血痕を嫌というほど、良く見ている。

 経験を積んだ尚八郎の眼力は、黒ずんだ染みを血の跡と断定した。


 「鈴が何者かに噛み殺された時、血が飛び散り、その血が鼻緒にも恐らく付いたのだろう」


 「そうに違えねえ」


 尚八郎が、血が鼻緒に付着した理由をぽつりと口にした。


 「大友さま、それに間違いありませんで」


 銀次が、それを裏付けた。






 
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