恋猫
五谷家の屋敷は、楓家の屋敷から徒歩で、現在の時に換算すると約10分。
三人が道のりの半ばに指しかかった頃。
「あっ、忘れ物を・・・」
篠が立ち止まり、忘れ物をした事を不意に思い出した。
「何を忘れたの?」
沢が篠に尋ねた。
「扇子です。今から、戻って取って参ります」
「一緒に行って上げようか」
と、沢。
「大丈夫です。すぐ近くですから、ひとりで行って参ります」
「では、気をつけてな」
蔵乃進が楓家に戻って行く娘に声を掛けた。
「父上、わかりました。すぐに戻ります」
篠は父親に声を掛けると、振り返り小走りで楓家の屋敷へ向った。