恋猫
美化は、ずっと三人の後を忍び足で追っていた。
暫く後を追っていると、篠が立ち止まった。そして、父母と何やら立ち話をしてから、今来た道を戻り始めた。
話の内容から、扇子を忘れて楓家の屋敷に取りに帰るみたいだ。
「しめしめ。絶好の機会が到来。神も仏もいるもんだ」
美化は篠が一人になるのを待ち受け、急に篠の前に姿を現した。
「あっ、先ほどの猫。美化だったわね」
篠が美化に気が付いた。
美化は手招きをして篠の少し前を、振り返り、振り返り、歩いて行く。そして、篠を大きな通りから、人通りの少ない路地へ、誘導して行った。
「美化、いったいどこへ行くつもり」
篠は、物凄い磁力に引っ張られるように、美化の後をふらふらついて行く。
路地の中ほどに差し掛かった。