恋猫
「篠さま、待って下さい。その前に、ひとつ聞きたい事がございます」
抱き付く篠の体を引き離し、淳ノ介が心に湧き上がる疑問を篠に投げ掛けた。
「何でしょうか」
「篠さまは、果たして着物を自分で着る事が出来るのでしょうか」
「自分で着物の着付け・・・」
(あら、どうしよう。着物の着付けなんかやったことないじゃん)
篠は、そこまで考えが及ばなかった。元々、猫は一年中、そのままの姿。つまり、生まれたままの素っ裸。着替えや、着付けなどする必要は全く無かった。
「着物を脱いだは良いが、着れぬとあっては恥を掻きまする」
淳ノ介が心配顔で篠を見詰めた。
本物の篠は、もちろん自分で着付けなど、朝飯前。だが、化身した篠は、着付けなど、した事がなかった。