恋猫

 美化は、辺りをきょろきょろ眺め回した。
 幸い、誰かに見られている気配は無い。


 胸を撫で下ろす暇も無く、美化は近道を全速力で駆け走り、淳ノ介より早く楓家の屋敷に辿り着いた。


 美化が自分の部屋に入った。


 (あ~あ、凄い経験だったなあ)


 美化は、あの時のあの瞬間を思い出すだけで、胸がか~と熱くなった。


 (迫力が桁違い)

 (衝撃が半端じゃない)

 美化はあのシーンを頭の中で巻き戻すと、今もどきんどきんと心臓が大きく太鼓を鳴らした。


 (こりゃ、中毒になるかも)

 (猫のオスなんぞの相手なんか、馬鹿らしくて、ちゃんちゃらごめんだね)


 美化は馬鹿げた事を考え続けている。
 部屋に戻り、猫に戻っても、美化はなかなか通常には戻らなかった。





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