恋猫
どんどんどん。
「開けてくだされ。五谷でござる。夜分、申し訳ござらんが、急用でござる」
どんどんどん。
「開けて下され」
淳ノ介が門の横手にある通用門を開けると、門の前でそわそわしている五谷蔵乃進だった。
「夜分、申し訳ござらん。実は、娘篠が・・・」
淳ノ介が蔵乃進の話に耳を傾けた。
話の内容を要約すると。蔵乃進の娘の篠が、今だ家に戻らない様子。それで、蔵乃進が心配の余り、楓家に事情を聞きに参上したというもの。
「えっ、篠さまが・・・。可笑しいですね。ほんの先ほど、お屋敷まで送り届けた所ですが」
淳ノ介が首を傾げた。
「それは、今しがたの事か。それなら、入れ違いになっかも分からんな。取り急ぎ屋敷に戻るといたそう。急ぎ、確かめたい故、これにて、失礼致す」
蔵乃進はそう言葉を残すと、慌てて帰って行った。