恋猫

 淳ノ介は、なぜか胸騒ぎがした。


 「もしや、篠さまは戻っていないのでは・・・」


 そんな予感が、淳ノ介の胸を重く締め付けた。


 (よくよく考えてみれば、あの時の篠さまは可笑しかった。いや、異常に可笑しかった。余りの事態の進展に動揺していたので、見過ごしてしまったが・・・。外観は篠さまなのだが、内面は人が違ったような。篠さまが無事屋敷にいてくれるといいのだが・・・)


 淳ノ介は篠が屋敷に戻っているようにと、祈りたい心境だった。



 美化は迷っていた。

 篠の死体のある場所まで先導しようか、否か。


 (もし、死体のある場所まで先導すれば、なぜ知っているのかと、あらぬ容疑を掛けられる)


 (きっと、その内、死体は自分が教えなくとも、見つかるだろう。そうだ。そうに違いない)


 美化はいろいろ思い巡らし、そうする事に決めた。

 心が痛む。


 (篠さま、勘弁してね)


 美化は心で両手を合わせた。





 
< 55 / 146 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop