恋猫

 五谷蔵乃進は急いで屋敷に戻ったが、屋敷中捜しても篠はいなかった。


 「どこに消えたものか。淳ノ介が屋敷まで送り届けたものが、屋敷に篠の姿は無い。どう考えても、尋常ではない」


 「篠は神隠しにでもあったのか。まさか・・・」


 蔵乃進は蒼ざめた顔で両組して思案していた。


 「あなは、篠は、なぜ帰らないのですか。どうして、消えてしまったのですか。うううっ・・・」


 蔵乃進の妻の沢は、うろたえて泣くばかり。

 「心配いたすな。必ず、見つけてみせるから」

 蔵乃進は、ただただ妻に気休めの言葉を掛けた。


 「思案しても何も進展はしない。行動するしかあるまい」


 「よし、行動しよう」


 そう考えて、蔵乃進は走って番屋に行き、篠の捜索を依頼し、次に楓の屋敷に大急ぎで向った。






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