恋猫

 番屋の中には、数人の同心、岡引がいた。その中の、ひとりの同心と岡引が、篠の事件を担当してくれた。


 淳ノ介の先導で、三人は大急ぎで事件の現場に向った。
 現場に着くと、先に到着していた蔵乃進が、篠の遺体のそばで、崩れるようにして泣いていた。


 淳ノ介は、その姿を見るのが辛かった。


 「これは、酷い。仏は喉を噛み切られて死んでいる」


 東町奉行所の同心 大友尚八郎が言った。


 「何か、獣にでも噛まれて様な傷跡だ」
 「大友様、手に引っ掻き傷がありますぜ」


 岡引の銀次が腕の傷に目を留めた。


 「この傷も、獣に引っ掻かれたような傷だな。益々わからねえ」


 尚八郎が、思わず腕組をした。





 
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