恋猫
淳ノ介は自分の部屋で、腕に頭を載せて横になって思案をしていた。
「見合いの席で楽しく談笑していた篠さまと、扇子を取りに戻って来た篠さまは、別人ではないのか」
「見合いの席の篠さまが本物で、扇子を取りに戻って来た篠さまが、猫か、狐か、別の獣の誑かしとしたら・・・」
「篠さまの人格が、見合いの前後で大きく変わったとしても不思議ではない」
淳ノ介は、恐ろしい推理の紐を手繰り寄せていた。推理の紐は、縺れていたが、手繰り寄せ、解けるほどに、身震いが大きくなった。
「としたら、私が抱いたのは、猫か、獣だったのか。そんな馬鹿な・・・」
淳ノ介の顔から血の気が、さっと引いて行った。