恋猫
淳ノ介は、むくむくっと立ち上がった。
「そうだ。ここに暢気に寝転んでなんぞおられん。もう一度、篠さまが殺された現場に行ってみよう。何か、手掛かりが摑めるかもしれん」
「よし、そうしよう」
思い立ったら吉日。淳ノ介は一目散に現場に向った。
現場には、篠さまの遺体は、すでに番屋に運び込まれたのか、もうそこには何も無かった。
死体の置かれていた場所の近くには、微かに血痕の後が見受けられた。
「ここで、篠さまは噛み殺された。ここから屋敷までの間に、猫か、獣が人間に化身したとすると、着物を自分で着る事なぞ出来る筈がない。なぜ?篠さまは着物を着ていたから、化身した篠さまは、着物を着たまま化身している筈だから・・・」
現場に来て、篠さまの殺害場面を想像していると、淳ノ介に途方も無い閃きが湧き上がって来た。